
きれいなたべものはこのうえなく美しい。

GW明けて翌日、仕事疲れを癒そうと「トロワグロ」に行こうとしたおぢさん、
その日は定休日だったのでしょんぼりしてお店の選択権を私に与えてくれた。
こんかいわたしが選んだのは、三田の名店「コート・ドール」。
新宿のドトールに今日はスーツ姿で現れ、
前回のタケノコ族姿のチンピラとはまるで別人にしか見えないおぢさんは、
最寄り駅の白金高輪からコートドールまでの道のりで迷子になった際に
「こっちからおいしそうなにおいがする!」
と無茶を言い出し、わけのわからない路地に入ったくせに、
なぜか見事に最短距離でお店にたどりつくという芸当をこなしておりました。
ほんとうにすごいひとだなあと毎回思います。いろんな意味で。
赤ピーマンのクーリこのお店の名物のひとつ、アミューズの赤ピーマンのクーリ。
見事にふわっふわ。ゆうわりとした食感、とても繊細でクリーミィ。
ピーマン独特の味はほぼ残っておらず、かすかにやさしい味として残滓がある程度。
ピーマン嫌いでもこれは大丈夫。
私は舌触りに感動したのだけど、おぢさんはイマイチの様子。
テーブルにちんまりと置かれたなでしこの花は、食用にもなります。
これがアミューズかと思いました。
テーブルの花をむしって食うアミューズが出てくるフレンチレストラン。
それはそれでいいなあ。
なわけねえだろ。
フォワグラのテリーヌ今日もオールアラカルトで元気に食すおぢさん、
オードブルはフォアグラのテリーヌからスタート。
添えものはレンズ豆らしい。
このテリーヌは美しいなあ。じいっと見入っていると、
おぢさんがふとこっちを見て切り分けてくれた。
舌でじわあっとゆっくり脂がとけて味が染み入る。
これはおいしいいいいいいいいい!!!!!!!!!!
でもやはりおぢさんは「うーん」てな顔。
テリーヌ皿のうえの3つの調和が合わないんだそうだ。
なんだか、バラバラだなあ、とか言いながらじっと噛み締めていた。
テリーヌ、最高なんだけどな。
ぷるぷるしながら私も食べました。
(後日ネットで調べていたら、このレンズ豆とテリーヌが
若干まとまっていない気がするみたいな記述が他にもありました。
あれだ、おぢさんも言っておりましたが、
「好みはひとそれぞれというのが大前提で、個人的な評価を出しているだけ」
ってことです。コートドールは非常に高い評価を得てますし、
私もとてもおいしいとおもいました。
ここでの辛口評価は、参考までに書いております。)
野菜のエチュベ コリアンダー風味わたしのオードブルは定番らしい野菜のエチュベ。
すっぱい!すっぱいでござる!!
エチュベは野菜から出た水分で蒸し煮にする料理法なんだけど
量が大目なもんで大変だった。すっぱくて。
味?ふふふ。
すっぱさで混乱して覚えてない。
長崎産平スズキ皮つきかりかり焼き マスタードソースかりかりおさかな大好きおぢさんのために、
私が頼んだおさかながこれ。
「自分のすきなもの頼めよ・・・」
といわれましたが、まあまあまあ。
じっと見ているおぢさんに、3分の1を切り分けてシェアしたら
「こんなにくれるの!?」
必要以上に驚いていました。ソースがねえ、もう、すごい。旨い。
かりかりというよりはしっとりだけど、うーん最高。
福島相馬産ノドグロの天日焼き オリーブソーススズキとずいぶん迷ってノドグロにしたおぢさん、
「・・・・・・旨い。」とぽつり。
そう、これは手放しで「旨い、旨い」と褒めちぎり、
うれしそうにワフワフと食べてました。ソースが、最高。
スズキのソースもよかったけど、同時に比べてみると格段にこちらが上。
はっとしてしまうほどの味。
「これはいい、これは素晴らしいね」
ずっとそういいながらごきげんでたいらげた。
北海道茶路産 仔牛のローストわーたーしーのー

絶妙な火の通り方。
ここで、切り分けてシェアしていた私たちをみて、
一瞬だけ表情がひきつったサービスの方がおられた。
(支配人さんではないよ)
まあ、しょうがないのだけど、
でも表情に出したのはこことベージュ東京だけかな。
ちなみに、私らのうさんくささを目の当たりにして、
じーっと見つめ続けたのもベージュ東京だけだ。
どこのお店に行ってもかなり視線を感じるんだが
(そりゃうさんくさい同業者臭を漂わせてんだから仕方ないが)
階段上から見下ろしながら、モロにこちらを見て耳打ちしあっていたベージュは
ある意味すごいチャレンジャーだと思う。グランメゾン級のお店なのに。
私が新聞を見ている隙にじっと観察し、私がそちらを見るとそ知らぬ顔で
すーっといつのまにか顔を元の位置に戻しているなかなかタヌキなのはアピシウス。
ちなみにタテルヨシノは黙っててもたまにシェア用に白皿を出してくださる。
いろんなお店があるなあ。
今度から、最初からシェア用の皿を頼もうと思った。
わたしが肘をついて、サービスの方がお皿を提供するのを邪魔していると
おぢさんはすごく叱りつけるのだけど
(肘をついているせいで提供が遅れる=サービスマンが頭のなかで考えている、
他のテーブルや料理の仕上がり時間との調和が崩れて迷惑なんだそうだ)
シェアについては何も言わない。自分のを切り分けてさっさと私に食べさせる。
「ある程度の知識とマナーは必要だけど、
必要以上に凝り固まった常識や概念は別に必要ない。
メニューも食べきれるなら食べたいものを頼んでいいと思う。
一緒に行く人間と合わせる、とかいうが、合わせるのもサービスの力量。
お客側がそこを考えすぎる必要はないと思う」
一時期、うちのブログを見て、好き放題に注文するうちのやり方をみて、
フレンチは同行者と食べる品数を合わせるものだと書かれたことがあるが、
それに対してのおぢさんの意見。
まあ、グランメゾン級なら、力量をお店に任せるのは間違ってないのかもしれん。
私は、結構外食時のマナー、常識の概念が強すぎて、
逆に接客をする側のときにその「自分の常識」をお客様に押し付けてしまうときがある。
今回の、一瞬表情に出てしまったサービスの方と同じだ。
間違ったシルバー(カトラリー)を使われても腹立たしいときがある。
自分がサービスの立場になったときに、
あとからいつも後悔して、思うことは、
私のような常識や概念に凝り固まった人間は、サービスに向いてないなってことだ。
ネットで、うちのブログを見て「そんなのはマナー違反だ」と書いた方と同じ、
私もなんだかんだでその方と同じ、型にはまった、
自分が考えるうえでの「サービスに向いてない人間」だ。
お客様がなにを注文しようとそれはお客様の勝手や好みであって、
それをうまくあわせるのは、確かにこちらの役目だ。
間があけば、それを埋めるなにかを持っているべきなのもサービス側。
なにが正しいのか、は結局わからないけど、
寸たりとも表情に出さない接客をしていたおぢさんを私は知っているし、
ささいな常識をお客様に押し付けないおぢさんの考え方は好きだ。
まあ、自分が好きだと思うほうを学べばいいんだな、
ぼんやりとそんなことを、そのひとを見ながら考えていた。
国産牛のしっぽの煮込み 赤ワインソース「しっぽください」
と頼んだおぢさんがかわいかった。
牛テール煮込みといえば、
秋に訪問した「KM」だが、
あのときあまりのおいしさに顔がほころんでしあわせいっぱいだったおぢさん、
今回は表情が曇り空。
「これは・・・ほんとうにじっくり煮込んだの?」
わたしに聞かれても困る。
切り分けて私にくださるのを食べてみた。
確かに、味がしみこんでいない。味が浅い、というか。
「煮込んだ赤ワインとソースの赤ワインが違う気がする。
それを一緒にしたら一体感はあったのかも・・
それにしても肉に味が乗ってないなあ。普通に美味しいけど。」
そう、なんだろう、以前たべたKMの牛テール煮込みとか、
あとうちで作るラフテーなんかは、肉の奥の奥まで
ぎゅうううっと煮込み汁の味がしみこんでて、
そういうのがないんよ。不思議だった。
ネット上ではすんごっく評価がいいのだけど、
これもまた人それぞれの好み、なのだろうか。

アラカルトで、デザートだけ最初の段階で注文していなかったおぢさん、
今日は甘いものを食べる気分じゃないとのことだが、
なら、ってんで、せっかくなので、ここの名物、
茹で上げホワイトアスパラガス 4725円「ロワール産のホワイトアスパラでございます」
コトっと音をたてて置かれたそれは、
切り分けると湯気まですんっごいいい香り!!!!
質のいい塩とからしのソースで食べると、鼻からつんとアスパラの香りが抜ける。
東京で最高のホワイトアスパラを出すお店、というのは過言じゃない。
旨すぎて声が出ないおぢさん。
しばしふたり、固まって感動。
こりゃすごい。本当にすごい。
本来ならオードブルの品なのだが、
あまいものが今日は食べたい気分ではなく、
どうせなら、春だけ提供されるここの名物を食べたいと伝えると、
支配人さんが「それはどうもありがとうございます!」とにっこり。
動じない。
テーブルにホワイトアスパラを置いたギャルソンの若い男性も
「デザートがわりにアスパラ、というのもおつですね」
またも、にーっこり。
動じないなあ。
今回のこれはさすがに破天荒すぎたか、と心配してたんだけど。
私がギャルソン側なら、デシャップで「なんじゃそらあ!」とか言うレベルだぞ。
変な注文をしてほんとうにすみません。
ブログ上でいちいち難癖つけるみたいに書いてますが、
サービスも素敵ですし、全体的に品もあって、
わがままも聞いてくださり、
特に、わたしには、
フォアグラとスズキとノドグロはさいこーに美味、
赤ピーマンのクーリとホワイトアスパラは感動モノでした。
熊本産 和栗(丹沢)のモンブラン中にねえ、栗がねえ、こぉ、ぐりぐりっと詰まっててねえ、
しかもサクサクでさあ、フォーク入れるとシャリってさあ、
これは最高。おいしーーーい!!!!

お茶菓子についてくる爪楊枝、その袋がややきっしりと堅くて
紙が高級品!コート・ドール、ツマヨウジの袋の紙質まで高級品!!
↑というようなことをひとりで小声で騒ぎ立てておりました。
「うーん、これは通常の倍の値段はするね!」
とおぢさん。なんだかなあ。低俗で申し訳ない。
わがままばかり書いておりますが、
日本最高峰といわれる名店に行けてしあわせでした。
ありがとうございました。
いちど行っただけで評価を定めたくないから、
もう一度行って、また牛テールを頼んでみたい。
そして、あの感動のホワイトアスパラに会えるのは次はいつかなあ。