さて、山谷に夕暮れがやってきた。へたをすれば14時やら16時やら、日暮れ前には仕事終わり、居酒屋で飲む日雇い労働者の姿を見かけるし、17時ごろには上の画像のように教会からの炊き出しの行列に並ぶ浮浪者の姿が見られる。山谷の夕餉の景色である。稼いだ者はそれなりの店へ、稼がなかった者はそれなりの炊き出しへ、この食事の差は夜の寝床でも見受けられる。下の画像は山谷でいちばん大きな商店街(ほとんどがシャッターの下りた、廃墟商店街と化しているが)の夜の写真だ。商店街の軒先でダンボールを敷き、眠る人々。日雇い労働者は稼いで安宿に泊まるが、浮浪者は商店街で眠る。
「寒いのに、かわいそう」ととある仲よくなったお店の方と話していたら、「いや、あれは自業自得だから。同じ貧困層でも、日雇い労働者(=安宿に泊まっている人)は昔からあれでもなまけずに働いてきたから、宿に泊まることができている。でも、仕事があった時代にも働かずにいたから、路上生活者になっているほうは、あの姿なのだから。浮浪者、日雇い労働者、と皆はひとくくりにするが、彼らの中にもいろいろいる。さまざまな訳があって家庭や住所を捨てた人も、ただ単になまけて堕落した末にこの生活にたどり着いた人も、いろいろな人がこの場所に集ってきている。事情があってここへ来た人たちはちゃんと稼いでいる。でも、そうじゃない人は路上にいる。」と。また、その店主曰く、ここへ来た人のなかには、妻からの家庭内暴力の末に、逃げてきてここで生活している人もいるのだとか。女性を見ると逃げるんだそうな。そういう意味ではあまり女性のいないここは天国なのかもしれない。

さて、日本一防犯カメラの多いコンビニは、ここ泪橋のセブンイレブンであるが。
いちばん上の画像にもあるが、コインロッカーやコインランドリーの一部は夜になると施錠されてしまう。かつてマンモス交番と呼ばれた交番が山谷にあったが、今は場所を少し変え、やや小さい鋼板へと変わってしまった。かつての山谷は、今の山谷住人がまだまだ若かった20年ほど前まで、それはそれは治安の悪い土地であった。浮浪者は吹き溜まり、暴動が起き、犯罪率も高かった。だが今や山谷の住人も高齢者ばかり。暴動を起こしたくても歳には勝てず、犯罪率は年々低下。今は、私がワンピースの下にGパンをはき忘れ、ワンピースのみで夜中に歩いていても何も起きぬ平和な町に変わっている。(いや、でも女性はスカートでは歩かないでください。私は顔がアレなので何もなかっただけで、やっぱり治安が「いい」とは言いかねる町ですので。)それでも夜ともなると交番前には警官が常に立っており、中には3人ほど必ず待機している。他の交番とはかなり空気の違う交番ではある。
交番前で警官相手に雑談を延々くり広げる光景。
そして泪橋のセブンにて、じいさんが酔っ払って床に倒れこみ、
新人っぽい店員が困った声をあげ先輩店員に助けを求めるも、
先輩店員、慣れているのかほかの客の接客を黙々とこなす。
さわやかにスルー。新人らしき店員、酔っ払いにさらにからまれかわいそう。
夜、ホテルに戻ると1階ロビーでは外国人客が3人集まり、
なぜか酒でもジュースでもなく牛乳を3人で分け合って飲んでいた。
11時ごろまでは廊下を歩く音が聞こえるが、労働者が多いせいか、
朝早いためだろう、0時には物音がしない。4時前にはちらほら出かける音。
上は当時の日記である。
交番前は、夜に通りがかるたびに警官が酔っ払いにからまれていた。
宿の前にたくさん並ぶ自転車。
さて、16時くらいから21時半まであいている、とある山谷の居酒屋がある。
60年代に建てられたこの古びた建物がいい味をだし、その内装とともに非常に一部の飲み屋マニアの間で有名な「大林(だいりん)」である。ここがまた、非常に店主がお堅いため、店内での携帯(メールも!)禁止、撮影禁止、泥酔禁止、大きな声でのおしゃべり禁止、とにかくまあ、店主がいやだと思うことをすると即イエローカード。「ちょっと、お客さん。」と声がかかる。背筋の伸びる思いをしながら飲む、なのになぜかお客は絶えない。あの昭和風情がたまらんのでしょうな。一歩、店内に足を踏み入れたとたんに、わっと昭和へ逆戻りしたような気持ちになれる内装。きれいに磨きこまれたつやつやの一枚板や柱。夏は涼しく、冬は凛とした空気の充つる店内。いや、いいお店です。とにかく内装が素晴らしく、居酒屋の本の表紙もかざったそう。ええ、撮影禁止ですよ、ほんと素晴らしい店内だったけど、うう、我慢しました。古民家マニアなんですが、ざんねん。小ビール、もろきゅう、肉どうふ、しじみ汁。これで1280円。閉店間際だったせいか、お客は私を含めて四人しかおらず、そのうちひとりは泥酔じいさん。ものすごくくだをまき、近くのお客にからみ、店主じいさんにイエローカード連発されている。泥酔じいさんはしばらく絡みを繰り返したのち、レッドカードを食らい、店主はささっとそろばんを弾き、お会計されてしまった。それでもなお、「社長ぉ…吉原でさぁ…うあ〜」と居座る泥酔じいさんを見て、うしろを向いて微笑む店主じいさん。「あんた、飲みすぎると身体壊すから。今日はもうやめときなさいよ。」規律が厳しいことで有名なこのお店の無愛想な店主、決して、冷たい人というわけではないんだろう。
「あのお店は、夏の、まだ明るいうちに行くのがいい」
とはこのお店の常連の方の言葉だが、風情を味わうのならそれもいい。
冬の、暗いなか、あの店で飲む熱燗もいいとも思う。
店をでると先ほどのじいさんがまだ店の前でねばっていた。
※大勢での入店、撮影、携帯電話のご使用はご遠慮ください。
「大林」(だいりん)
住所・・・日本堤1丁目24−14
南千住駅からホテル「ほていや」に行く途中、道路右側。
電話番号・・・調べても出てこないんだよこのお店。
定休日・・・どうやら火曜日
営業時間・・・16時ぐらいから21時半。
LOは21時だと思って入店したほうが吉。
とにかく詳しい情報の少ないこのお店です。






